第三回 スパイ戦士
ダブルスパイ
型番:C-111
所属:サイバトロン(スパイとしてデストロンに潜入)
地位:二重スパイ
変形:デストロン戦士、スポーツカー(ポンティアック・フィエロ)
声優:佐藤正治氏
登場作品:トランスフォーマー
ザ・ヘッドマスターズ/ザ・リバース
日本におけるシリーズ第三弾「ザ・ヘッドマスターズ」(1987)に第十六話以降から登場するキャラクター。
海外では特番TVアニメ「リバース」に登場。
サイバトロンとデストロンの二種類のロボットモードを持つ異色のトランスフォーマーです。
サイバトロンモードのときは「スペースパンチ」、デストロンモードのときは「カウンターパンチ」とそれぞれ異なる名前で呼ばれます。
その性格は冷静沈着で無口。
本来はサイバトロン側に所属する戦士で、デストロン側に侵入偵察しているという設定。
国内版ではツインキャスト(サイバトロン通信員のブロードキャストが「ヘッドマスター」にてパワーアップした姿)の部下というポジションにありました。
ただし二重スパイと名乗ってるだけにホントのところどうなんでしょうか。わかりません。
なにぶん古いものなので、撮影に使用した玩具は状態がちょっと悪いです。
さらに写真では欠品していますが本来はスペースパンチ、カウンターパンチそれぞれ違った形の武器(迫撃砲および光子キャノン)を手に持たせるようになっています。併せてご容赦いただければと。
武器を持っている画像は試しに形の似ている他のトランスフォーマーの武器を装着したもの。
二連砲タイプはターゲットマスターのファイアーボルトで、長い方はスーパージンライの超電導ライフルです。深い意味はありません。
ふたつのロボットモードを持ちつつも、ビークルモードは一種類のみで、ポンティアック・フィエロをモデルにした形態へと変形します。
ダブルロボットモードという変形の関係上、他のカーロボットのように運転席が再現されていないのが残念ですが、なかなか格好いいビークルモードです。
フィエロはちょうど1984〜88年にかけて製造された2シーター、ミッドシップの米国車。
玩具が発売された当時としては割と目新しいクルマだったわけですが、「ヘッドマスターズ」劇中の2011年時点では、かなり旧車の部類に入ってしまうのかもしれませんね。
ただ、設定上のビークルモードの最大速度は時速約260kmとあります。
そういえばこのフィエロ、何故か有名スーパーカーのレプリカ土台として利用されているのをよく見かける気がします。そもそも実車の存在からして、色んなクルマに化けるのに適した性質を備えていたって事なんでしょうか。
基本的なギミックは、どちらかというと複雑な部類ではなく、大まかに言ってしまえばロボットの表がサイバトロンモード、裏にするとデストロンモードになる表裏一体トランスフォームといった感じなのですが、それぞれの形態で腕部と頭部が違ったカタチに展開されるので、実際に手にとってみると、話で聞く以上にちゃんとそれぞれ独立した二種類のキャラに「変形」しているなという実感が味わえます。
このダブルスパイ、実はかつてのダイアクロンシリーズにラインナップされていたロボット&ロボにヒントを得たという噂があります。
あちらも2種類のロボットに変形可能というコンセプトですが、それよりもさらにシンプルにまとめられ、格段に遊びやすい印象を受けます。
当時のトランスフォーマーは初期の旧ダイアクロンシリーズの金型流用だった商品展開から脱し、ほぼ新規設計によるラインナップに切り替わった「2010」シリーズの時点で、玩具のクオリティが著しく落ち込んでしまった感がありました。そんな「アニメの物語に登場するキャラクターの設定ありきで玩具は後から」という感覚だった「2010」から一転し、「トランスフォーマーという作品のキャラクターノベルティ商品」というよりは、玩具としての面白さ追求への原点回帰とでも申しましょうか、翌年の「ヘッドマスターズ」期の玩具にはこのダブルスパイのようにギミックに凝ったものが多く、素直に面白いと思える玩具が沢山リリースされました。
また、このダブルスパイを元祖として、後に続くシリーズにもダブルクラウダーやダブルフェイスのようにサイバトロンとデストロン両陣営のロボットモードをもつスパイ戦士もいくつか登場するようになりました。
ビーストウォーズシリーズの初期にみられたミュータントヘッドもギミック的にはスパイ戦士の系譜にあるといえるかもしれません。
あとは忘れちゃいけないリバースコンボイ。彼こそある意味スパイ戦士の究極の姿といえるでしょう。
リバースコンボイは次回あらためて紹介する予定です。
ダブルクラウダーはダブルスパイの発想からさらに踏み込んだ面白いギミックで変形します。
ダブルクラウダーの登場する「超神マスターフォース」というシリーズでは、人間がゴッドマスターとよばれる存在に変身し、さらにトランステクターというビークルタイプの装置と合体する事でトランスフォーマーになれるという設定がありました。ダブルクラウダーもそんなゴッドマスター戦士のひとりです。
玩具ではゴッドマスターのフィギュアがエンジンに変形し、トランステクターにドッキングする事ではじめて変形ロックが解除されるというギミックが採用されていました。ダブルクラウダーにはサイバトロンとデストロン二種類のゴッドマスターフィギュア(物語上は二種とも同一人物の違うコスチュームという設定)が付属し、それぞれがドッキングする事によりサイバトロン、もしくはデストロンとしてのロボットモードへの変形が解除されるというものでした。
海外では傭兵のパワーマスター戦士で、ダブルディーラーという名前でした。
腕は確かなのですが、報酬次第でサイバトロンにもデストロンにも寝返るというキャラクターです。
海外設定では付属フィギュアはトランスフォーマーの相棒のサイボーグ人間という扱いになっています。
サイバトロン、デストロンと任意のパートナーとドッキングすることでそれぞれの所属のロボットモードになれるというわけです。
ダブルフェイスは「マイクロン伝説」に登場するキャラクターでバイクにトランスフォーム。
本体のみでもひとつのトランスフォーマーとして独立してるんですが、この時代のシリーズにはマイクロンという、相棒の小型トランスフォーマーが随伴しています。ダブルフェイスのスパイギミックはこのマイクロンがポイント。
商品にはミラーという謎のライダーが付属していて、もちろんこれはバイクに跨らせる事が可能です。
しかしこのミラーこそはブライトとシャドウという二体のマイクロンが上下合体した姿で、それぞれがマスクのような形態に変形し、ダブルフェイスに装着できるようになっています。つまりブライトフェイス時がサイバトロン、シャドウフェイス時がデストロンという寸法。
小型ユニットとの合体が二つのロボットモードの鍵になるという点では、ダブルスパイよりダブルクラウダーからの影響が強いのかもしれません。
ちなみに「ロボットマスターズ」のキャラクターとしてもダブルフェイスは登場していますが、こちらはミラーを伴わない別の姿なので注意。
さらに「ギャラクシーフォース」に登場するノイズメイズもスパイ戦士のひとつ。
ただしこのキャラは物語上重要な鍵を握っているにもかかわらず、スパイ戦士的にはチップを差し込むとエンブレムがサイバトロンからデストロンに変わるというギミックのみで、いかんせん上記の二体に比べると地味な印象が否めません。
いちトランスフォーマー玩具としてみればかなり良作の部類なんですけどね。
エンブレムといえば「ヘッドマスター」あたり頃までのトランスフォーマーの玩具には温度感知で色が変わるシークレットエンブレムがボディのどこかに付いていましたが、ダブルスパイにはサイバトロン/デストロンそれぞれのロボットモードをとった時に胸にシークレットエンブレムが現れるようになっています。これはちょっと二倍得した気分。
私個人的な思い出としては、発売当時はその玩具コンセプトの面白さに大変興味を引かれつつも、なんだかんだで入手しそびれてしまった玩具のひとつでもあります。地元にも入荷していなかったみたいで。しかしそれ以降なにかと頭の片隅には残っていて、長い間心残りだったんですよ。
ちょうどバイナルテックシリーズを切っ掛けにトランスフォーマーに出戻った折に、そのずっと心の片隅で心残りだった玩具を(既に詳細な記憶は薄れていた事もあり)ネット等で検索し、その後ネットオークションで現物に出会い、念願かなってめでたく入手したという感じです。
今後も比較的新しい玩具に加え、こういった「積年の思いが募ったトラウマ玩具」に関してもいくつか取り上げていきます。
懲りずによろしくお付き合い戴ければ幸いです。