第四回 リバースコンボイ/リバースメガトロン
型番:RM-24
所属:サイバトロン(とみせかけて実はデストロン)
地位:秘密司令官(とみせかけて闇の破壊大帝)
変形:M1エイブラムス戦車、コンボイ、メガトロン
声優:加藤精三氏(旧アニメシリーズ時)
※この状態では映像作品未登場
登場作品:ロボットマスターズ
リバースコンボイは「ロボットマスターズ」に登場するキャラクターです。
「ロボットマスターズ」は国内で展開されていたトランスフォーマーの世界観をベースに独自の展開が広がっています。
初代G1トランスフォーマーが活躍する時代が主な舞台となっており、2004年という劇場版で描かれたユニクロン戦争の前年ということで、初代コンボイ(G1コンボイ)も健在でサイバトロンの指揮をとっています。そこにブラスティゾーンという時空の歪みの影響で太古の地球からビーストメガトロンが襲来。現代のデストロンと合流し、サイバトロンと交戦状態に陥ります。
そしてサイバトロン側にもビーストメガトロンを追ってワープしてきたビーストコンボイが参戦。ストーリーが進むにつれ、国内版における各作品のキャラクターが時代や次元を超えてG1の世界に参戦。
そこには初代シリーズから物理的に世界が繋がっている「ビクトリー」、「ビーストウォーズ」だけでなく、デストロン側に参戦しているレッカーフックに関しては、別世界上の物語である「カーロボット」に登場の同名キャラが、時空を超えてG1世界に飛ばされた上で記憶を失った状態であることを暗に示すようなキャラ設定が与えられています。
さらに一部の雑誌媒体では現在ロボットマスターズと並行して展開中の別シリーズ「ギャラクシーフォース」(これも別世界設定)からギャラクシーコンボイまで参戦するといった、まさに国内版トランスフォーマーオールスターズともいうべき祭のようなシリーズです。
ちなみにビーストコンボイやビーストメガトロンは初代コンボイ、メガトロンとは別人という扱いです。
いわば初代コンボイ達の世界の未来の後継者、あるいは子孫のようなポジション(もっとも、未来の世界でも初代コンボイやメガトロンはどこかで健在との事ですが)にあるのが彼らで、「ビーストウォーズ」では未来のトランスフォーマー達が太古の地球にタイムスリップしたという設定になっています。ビクトリーセイバー、ビクトリーレオも同様。彼らはビーストコンボイ達ほどではないですが、初代コンボイ達より少し未来に存在するはずのサイバトロンです。
一方のリバースコンボイは、そんな歴代司令官オールスターズなかに加わった「ロボットマスターズ」オリジナルの新たなもうひとりの「コンボイ」・・・と思わせていて実は・・・!というひと捻り利いたキャラクターとして登場。
「ロボットマスターズ」シリーズの玩具的な内容としては、「ガンダム」におけるMIAクラスに近く、手頃な価格とサイズで展開される全年齢対応のシリーズといった感覚で、過去作品の主要キャラクターが現代風にアレンジ、リメイクされて復活した新規設計のものと、かつてのG2シリーズ、ビーストウォーズ等の低価格ラインナップをベースにしたリデコアイテムのふたつで構成されています。
かつてG2シリーズは国内展開がたった半年で終わってしまい、玩具が販売された期間も当然短かった事もあり、これまでG2関連の商品は中古市場でも多少のプレミアがついたりしていました。そのなかのいくつかは「カーロボット」以降、設定とカラーリングを一新し、物によっては金型を部分変更した別キャラクターとして再利用されてきましたが、ここにきて本格的な再登板となっています。
G1時代はロボット→ビークルの変形ギミックを第一に、可動は二の次と犠牲になってしまう事の多かったトランスフォーマー玩具ですが、G2の新規アイテム以降ではそれが大幅に見直されたのが特徴です。この傾向は「ビーストウォーズ」のラインナップでもさらに強まり、ここからトランスフォーマーは変形ギミックとフル稼働を両立した仕様が基本的なフォーマットとなりました。
加えてG2シリーズはポンプアクションや電子ギミックなど凝った設計がなされ、G2バトルコンボイなどの傑作が多いシリーズでした。
ただ、国内では当時タカラは勇者シリーズに力を入れていた事もあり、シリーズとしてのトランスフォーマーは低迷期ともいえる時期で、高クオリティなG2玩具は世間にもあまり注目がされないまま市場から消えていってしまいました。
国内でのシリーズ低迷は、さらに以前から雑誌媒体と玩具のみで展開していた「バトルスターズ」、「合体大作戦」より続いており、事実「合体大作戦」の終了からG2としての国内展開再開まで三年ほどの間が開いています。
これはトランスフォーマーのみに限った事ではなく、90年代初頭のロボット作品業界は今に比べれば相当冷え込んでおり、とくに1980年代初期にシリーズがスタートして続編を作り続けてきたロボット作品などは落差が激しく、あの「ガンダム」や「マクロス」ですらも大きく苦戦を強いられていた時期です。
これはユーザーの興味の対象が玩具やプラモデルよりも、家庭用ゲームに傾いていた事など、様々な理由が考えられます。
玩具関連では唯一「SDガンダム」関係が勢いを保っていたこともあり、トランスフォーマーにも同様の「PDトランスフォーマー」というシリーズが立ち上げられましたが、これも全24種といまいち不振のままに終わってしまいました。
しかし、その後90年代暮れの海外発信による「ビーストウォーズ」の盛り上がりや、その流れを汲みつつ、勇者シリーズのパターンをも引き継ぐかたちで始まり、こちらも盛り上がりをみせた国内の「カーロボット」以降のシリーズのおかげで、トランスフォーマーは20周年を迎えると同時に2000年代以降は再びシリーズとしての勢いを取り戻す事ができました。そういった状況でのG2トイ再評価と申しましょうか、「ロボットマスターズ」には日の目の当たらなかったG2のリベンジ的な思惑も裏テーマとしてあるような印象を受けます。
キャラクターそのものに関してもさらに説明しておきましょう。
まぁ、ネタバレになってしまうのですが、シリーズ開始当初の時点では何故か行方不明だった初代メガトロンが、紆余曲折を経て惑星ビーコンに存在したもうひとりのコンボイの身体を乗っ取って復活したのがこのリバースコンボイ、つまりリバースメガトロンというわけなのです。
その名前には、コンボイ型のトランスフォーマーと初代メガトロンが表裏一体になってるという意味でのリバース、そして戦線に舞い戻って復活を果たしたメガトロンという意味でのリバースと、ふたつの意味が込められているのでしょう。
メガトロンに身体を乗っ取られる前の「惑星ビーコンのコンボイ」はエネルギー工学の権威であり、ブラックホール連結システムという装置の開発に成功していたそうです。しかし、時空の狭間を彷徨っていたメガトロンにそれを利用され、不幸にも身体を乗っ取られてしまった・・・というのがリバースメガトロン誕生の経緯なんだとか。
メガトロンにはG1時代の初期からブラックホールとリンクして反物質を引き出すという超機能が設定上で語られる事がありましたが、劇中で能力を見せ付ける機会は皆無に等しいものでした(ロボット時に右腕につけている融合カノン砲がそれだという話もありますが)。今回のストーリーでようやくその能力の片鱗を垣間見せ、見事復活を果たしたと言う事なのでしょうか。
玩具の仕様はG2期に発売されたG2メガトロンをベースに、武装の変更と、コンボイヘッドとメガトロンヘッドが入れ替わるギミックが追加されたものです。G2のメガトロンとコンボイは、共にかつて(G1時代)の二人がパワーアップした姿という事になっていました。
G2メガトロンは93年に発売された少し大きいサイズのものと、翌年にそれを若干小型化したものが発売されています。
前者は音声ギミックを有し、後者はポンプアクションギミックがそれぞれ仕込まれていました。リバースコンボイ/メガトロンは後者のリデコアイテムで、上記の頭部ギミックが付加された代わりにポンプギミックの廃止と武装の変更がなされています。
玩具上はあくまでG2メガトロンのリデコアイテムという扱いになりますが、ストーリーの経緯から考えて、あくまでガルバトロンやG2メガトロンを経てリバースメガトロン化したわけではない事がわかります。
「ロボットマスターズ」は本来の歴史の流れをはずれ、既にパラレルワールドに突入しているわけですが、元々の時間軸では、2005年にメガトロンはコンボイとの一騎打ちの後に瀕死の重傷を負った後、ユニクロンの力でガルバトロンへと復活を果たします。しかし、このときに体内のプラズマバランスが均整を失った事が原因で思考回路に狂気が混じってしまい、策士であったメガトロンとは異なり、より直情的に破壊を欲するようになってしまいました。
海外玩具版では数年後にニュークリオンの影響で変形機構を失いつつもパワーアップを果たしたアクションマスターメガトロンとして再登場。
国内版では「バトルスターズ」で復活しダークノヴァの力を得てスーパーメガトロン、ウルトラメガトロンへとパワーアップ。
いずれもG2メガトロンへと繋がっていきます。
一方、海外コミック版では同じマーベルコミック社の「GIジョー」とストーリーがリンクしており、コブラコマンダーというキャラクターによって初代メガトロンがリペアされた物がG2メガトロンという事になっています。
海外版の展開ではこれまでに何人かのガルバトロンやメガトロンが混在しており(時空を超えて多次元や未来からやってきた者や、コピーが本物のふりをしていた者などさまざま)、非常にややこしい事になっています。
G2メガトロン、リバースメガトロンともにビークルモード時のモチーフになっているのは米軍のM1エイブラムス系列の戦車です。
1970年代より開発計画がスタートし、クライスラーディフェンス社の試案をもとに完成。79年に採用されました。
現在はクライスラーディフェンス社を吸収したゼネラルダイナミクス社によって生産され、配備が進んでいます。
その命名由来は、第二次世界大戦で独軍最後の大攻勢「バルジの戦い」で米軍に勝利をもたらした英雄で、陸軍参謀総長にしてこの計画の最大の推進者でもあったクレイトン・エイブラムス大将の名を冠したものだと言われています。
そもそもメガトロンはセイバートロン星にいた時代はタンクモードへのトランスフォーム能力をもっていたことになっていますから、G2での姿は原点回帰ということになります。むしろ彼の歴史においては、G1時代のガンモードこそイレギュラーだったと思えるほどです。
イラギュラーというと、G2メガトロンはデストロン側のゴーボットリーダーとしてスピード重視のスポーツカーへとトランスフォーム可能な別の姿も持っていました。これはいわゆる機構的なトランスフォーム能力とはちょっと異なり、G2メガトロンが体内のデザインパラメーターなる部分を変更する事で得た副次的な姿です。
また、このほかに設定上の説明はないのですが、G2と並行して展開していた「マシンウォーズ」版の航空機に変形可能な姿というのもあります。
G2後のメガトロンは、玩具版初期「ビーストウォーズ」の設定ではガビアルクロコダイル(インド産ワニ)のビーストモードを得たという説があります。さらに同TVシリーズ版のスタッフによれば、彼はサイバトロン対デストロンによって長岐に渡って繰り広げられていたグレートウォーに敗北した結果、あらたにパックス・サイバトロニア成立後には忽然と姿を消し、死亡説が囁かれているとのことです。
いわずもがなという感がありますが、かつての初代メガトロンは地球での復活以降は拳銃ワルサーP38へトランスフォームしていました。
小型質量置換装置により大きさを変え、射撃手(他のデストロン兵士)の手に収まるサイズになります。
カセットロンにも同様の装置が備わっているそうですが、大量のエネルギーを消費するため、既に体力を消耗しているときには元に戻れなくなるという困った面もあるとか。
ワルサーP-38はダブルアクション機構が特徴のドイツの名銃。ナチスも制式拳銃として採用していました。ただ、発射後に空薬きょうが左後ろ側に飛び出す仕掛けになっているため、まだ熱い状態の鉄の塊が顔面の前をかすめるという非常識な特徴も兼ね備えています。
そして、なによりもかのルパンIII世の愛銃として有名ですね。
実際に「トランスフォーマー」として発売された玩具は、ミクロマンのミクロチェンジシリーズ「ガンロボ・ワルサーP38」のリデコアイテムです。
ガンロボ時代から複数のバリエーションがあり、初回版はブラック仕様、つづいてシルバー仕様が発売され、さらにストックやサイレンサーなどの付属品が加わった特別バージョン(某ドラマとのタイアップ企画で販売されたもの)が登場。海外でまずメガトロンとして発売された物は、特別バージョンをベースにした商品でした。しかし日本国内で後にメガトロンとして発売された物は成型色が一部異なり(本来は赤である部分が青になっている)、さらに付属品のないバージョンでした。
完全な仕様のメガトロンとして日本国内での販売はつい最近の復刻版(「完全版」と銘打って発売)や「トランスフォーマー・コレクション」の登場まで待たなければいけなかったわけです。
ちなみに限定品として「完全版」とほぼ同じ内容の物に、成型色を初期販売時のバージョンにあわせた物も発売されました。こちらはメガトロンではなくメガプレックスというクローン兵士という扱いになりました。
メガプレックスはG2期にアナザーストーリー的に展開された「マシンウォーズ」に登場のキャラクターですが、そのストーリーをG1世界にアレンジしたというマニアックな設定です。
こういったリデコアイテム系は他にG2メガトロンをベースとしたディストラクティコン
ブラジオンなどもありました。
本来は米国のとあるショップ限定品で、後に日本でもトイザラス限定で販売もされたアイテムです。
ブラジオンはもともと海外版プリテンダーシリーズにラインナップされていたデストロンの電撃兵士(こちらは日本未発売)で、髑髏の顔を持つ和式鎧武者のプリテンダーシェル(=有機生物的外観を模した外装スーツのようなもの)を身につけたキャラクターでした。セイバートロン格闘技メタリカトーの達人でもあります。海外コミックでは一時期メガトロンに代わりリーダーの座に就いた事もありました。
プリテンダーシェルを脱いだ本体はもともとG2メガトロンタイプにも似たタンクタイプのトランスフォームモードをもっていた為、G2メガトロンと関連付けられて復活したのでしょう。
ガンロボシリーズには他にもS&W
M29(いわゆる44マグナム)、ブローニングM1910がラインナップされていました。
ガンロボ・ブローニングM1910もメガトロン同様にトランスフォーマーとして「超神マスターフォース」に登場しました。
デストロン側のキャラクターで、その名も「ブローニング」という名前。ただしメガトロンとの直接的な関係はありません。
ちなみにブローニングM1910は峰不二子の愛用銃。次元大介もマグナムを愛用していましたが、彼の愛銃はM19なので、こちらは別物です。
また、「ルパンIII世」シリーズの中でもキャストが全て一新され話題を呼んだ「風魔一族の陰謀」では、「トランスフォーマー」の日本版吹き替え版で初代メガトロン役を務めた加藤精三氏が銭形警部役を演じていらっしゃいます。加藤氏といえば他にも「巨人の星」の星一徹役も有名ですが、ここでの加藤版銭形のとっつぁんは、まさにボイスエフェクトのかかっていないネイキッドなメガトロンそのものといった趣。必聴です。
国内版ではメガトロンとガルバトロンは加藤氏が歴任したわけですが、海外版ではTV版でのメガトロン役を務めたベテラン声優フランク・ウェルカー氏から劇場版でレナード・ニモイ氏(「スタートレック」のスポック役で有名な名優)にバトンタッチしていたそうです。
それから数年後の「ビーストウォーズ」で初代メガトロンが再登場したときは脚本家がウェルカー氏の起用を望んだものの、いわゆる大人の事情で実現しなかった模様。これは日本語吹き替え版でも一緒でした。
「ロボットマスターズ」は現在のところ日本国内限定のシリーズなので、基本的に海外発売を想定していない国内版オリジナルのビクトリーセイバーやライオコンボイなどがラインナップに挙がっているわけですから、そのあたり日本限定でも新規設計のメガトロンは実現しないものか・・・とも思うのですが、タカラもハスブロやアメリカのファンに気を使っているのか、いまのところ実現には至っていません。
ただ、このリバースメガトロン。さすがはG2版をベースにしているだけあってなかなかのものです。
さすがに「ビーストウォーズ」以降のシリーズより古いと言う事もあり、脚部に横ロールの可動が無いため、自立させるのが少し難しいのが難点なんですが、触っていて楽しい玩具であることは確か。見た目より意外に動く可動部と、簡単かつ巧みに変形してしまうギミック。これはG2トイ全般に共通しますが、実際に手にとって見ないと良さはわからないかもしれません。
頭部入れ替えギミックも気がつくとパコパコと何回も繰り返し遊んでしまいますね。
「これぞ現時点での初代メガトロン決定版!」とは言えないかもしれませんが、なんとも不思議な魅力を持った玩具です。
同じくG2期の傑作バトルコンボイも近年ブラックコンボイという悪役として「カーロボット」のラインナップにあがっているので、以前よりは比較的入手しやすいかもしれません。カラーリングはオリジナルと違いますが、正直なところブラックコンボイの方が断然カッコいい。こちらもオススメします。
次回はこのブラックコンボイをテーマに、「カーロボット」としての紹介はもちろん、引き続きG2啓蒙企画として、G2のストーリーと他シリーズとの繋がりについても掘り下げていく予定です。